ステルス紛争について
「ステルス紛争」とは、当時国以外の政府関係者(政治家・官僚)、メディア、公衆、NGO、研究者等の注目を引かない紛争である。ステルス空爆機がレーダーに引っ掛らずに大きなダメージを与えるのと同じように、ステルス紛争はいわゆる「国際意識」の「レーダー」に引っ掛らずに大きなダメージを与える紛争だと言えよう。無視されるからこそ、よりひどい紛争に展開する。注目を浴びない紛争では、人道支援が少なく、外国からの強制措置も当事者の自制も効かず、紛争がもたらす飢えや病気による死亡者が止まらず、弾丸と爆弾による死亡者をはるかに超える。
このような紛争はよく「忘れ去られた紛争」と呼ばれるが、この言葉は誤解を招く。ある紛争が忘れ去られるには、まず覚えられる必要がある。注目を浴びない紛争の多くは、最初から覚えられていない。さらに、「忘れ去られる」という言葉を使うと、紛争に対応できるアクター(政府関係者、メディア等)が「うっかり」して紛争の存在に気付かなかったという印象を与えてしまいがちだが、事実はそうではない。これらのアクターは紛争の存在を知りながらも意図的に無視している。「うっかり」していることが原因ではない。
世界で数多くの紛争が繰り広げられているということもあり、選択的に外国の紛争に対応するのは仕方のないことだが、注目を浴びない紛争の中に、世界で最も規模の大きい紛争が含まれるのはあってはならないことだろう。しかし、現状はまさにそのとおり。死亡者の数で見て、第2次世界大戦後の世界の最もひどい紛争であるコンゴ民主共和国での紛争は無視し続けられ、日本ではその存在すらほとんど知られていない。
このブログの目的は、このような「ステルス紛争」に注目を浴びさせ、そしてステルス紛争がなぜ無視されるのかを明らかにすることである。私が2008年に出したこのブログと同タイトルの本(Stealth Conflicts: How the World’s Worst Violence Is Ignored:英文)のコンセプトをさらに追及するものであり、特に日本のアクター(主にメディア)による紛争の対応に注目する。より広い世界の紛争への対応には、このブログの英語バージョンを見ていただきたい(英語バージョンのブログのほうが、より充実している)。また、ステルス紛争の本に興味のある方には、目次はここ、序章はここ、そして第1章の一部はアマゾンのホームページのここから見られる。また、この本の書評は本ページの右側のリンクから見られる。
コンゴ民主共和国を取り上げる日本語の資料としては、大阪大学GLOCOL小冊子、「コンゴ民主共和国:無視され続ける世界最大の紛争」や、ヒューライツ大阪のニュースレターに記載されている「コンゴ民主共和国の紛争と日本-個人の気づきから社会を動かす」がある。

